野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

AIと医療②

前回は、人工知能の現状について、ご紹介しました。

では、医療との関わりはどのようになるでしょうか。
囲碁のように簡単に進歩することはありません。
囲碁とは、自分と相手しかいない、いわば変数が二つしかないゲームです。
ルールも、交互に、決められた領域に石を置いていき、地の広さを競うという極めてシンプルなものです。
これは人工知能にとって、とても得意な領域です。
変数が限定的で、ルールも一定であれば、どれだけその後の選択肢が多くても、ディープラーニングによって可能性の重み付けが可能です。
そして、自らとの対戦を繰り返すことで、急速にレベルアップすることが可能です。

では、医療に応用するためには何が必要でしょうか。

まず、適切な変数データを人工知能に導入する必要があります。
変数とは、人口知能に入力するデータです。囲碁でいうのであれば、両者が打つ「手」です。
例えば、血圧、心拍数、体温など、バイタルサインというものが代表的です。
バイタルサインだけでも緊急度を簡単に判定することができます。

参考になるのが発展途上国で行われている医学研究です。
発展途上国では、医師が圧倒的に不足しています。さらに、採血の技術を持った人も少ないですし、さらには採血結果を測定する設備も足りません。
したがって、誰でもできる検査によって得られる情報から、その人の重症度を判定するという試みが行われています。そこで重症と判定された人が優先的に医療機関へ運ばれるのです。

たとえば、採血をしても、測定する設備がなければ検査できませんから、色で判定するという方法があります。
WHOが発表している色の指標があるのですが、これを用いて貧血の誤診を防げるのではないかという研究が二〇一六年に発表されています。
(Accuracy of the WHO Haemoglobin Colour Scale for the diagnosis of anaemia in primary health care settings in low-income countries: a systematic review and meta-analysis)
色の判定ならヒトがやるよりも人工知能の方が正確ですから、このような技術はすぐに応用可能です。
例えば、ティッシュ一枚に血を一滴垂らせばそのヒトのヘモグロビン値を推測できる、というレベルには到達するでしょう。
もっと言えば、眼瞼結膜の写真を撮れば(要は、アカンベーしながらの自撮り)ヘモグロビン値を教えてくれる、というアプリは実現可能でしょう。これなら、血を垂らすための針すらいりません。

他には、National Early Warning Score (NEWS)というものがあります。
これは、呼吸回数、酸素飽和度(指先で測定可能)、酸素が必要かどうか、体温、収縮期血圧、脈拍数、意識レベルが正常かどうか、という指標を用いて、まずその患者が重篤な状態かどうかを判定するものです。ここで使われている指標は、誰でも安全に測定できるものばかりです。
もちろんこれですべての病気が診断できるわけではありませんが、診察を待つ人達のトリアージなら十分可能です。