野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

AIと医療①

AIと医療を考えるうえで、最近のAIが成し遂げた功績について紹介します。

平成二十八年一月、人工知能(AI)が快挙を成し遂げました。
グーグル社の開発したAIが、ヨーロッパチャンピオン ファン・フイとの五番勝負で、全勝してしまったのです。
Mastering the game of Go with deep neural networks and tree search
Nature 529, 484–489 (28 January 2016) 


さらには、三月には現代の最強棋士の一人であるイ・セドル氏と対戦し、四勝一敗という予想以上の成績を残しました。
戦績もさることながら、今回の対局は衝撃的でした。
この結果は、悲観的に捉える必要はないでしょう。
囲碁というゲームが大幅に進化する可能性があります。
特に、序盤で用いられていた「布石」は大きく変わると思います。
これまで定石とされていたものが、AIからみると互角ではない形で終わっていた可能性が高いので、新しい定石が次々と生み出されていくでしょう。

また、棋士レベルの底上げも進むでしょう。
AIを通じて学習することができるため、プロ棋士たちは自分の手を試すことができます。


今回の対戦を通じてみえた人工知能の特徴は、大きく分けると以下の二点です。

一) 成長の速さ
まず、棋譜を見ると三月の方が一月よりも明らかに強くなっていることです。
一月の時点では、中盤での不可解な手がありましたが、今回の棋譜では、一見不可解に見えても後からみると効いてくる、という手が多く、上達を感じました。
数ヶ月でここまで棋力を伸ばすのは、ディープラーニングの成果でしょう。おそらく、AIはこの数ヶ月で数千、数万局という対戦を重ねてきたのでしょうから。
つまり、今後人間のプロ棋士が実力でAIを上回る可能性は限りなく低くなった、とも言えるでしょう。
今回の対局でもイ・セドルは一勝をあげるのがやっとで、それも序盤から我慢を重ねて、一瞬のスキを逃さなかっただけで、実力はすでに負けているでしょう。

二) プロが見てもわからない「正解」
今回最も衝撃的だったのは、これです。人工知能の打つ手は、序盤からこれまでの常識を覆すようなものが目白押しでした。その手が示す意味は、トッププロ棋士たちが見ても意味が分からないものばかりでした。しかし、最終的にはAIが勝負に勝っているのですから、結局は序盤の手として有効なものだったのでしょう。
つまり、今回AIが示した「より正解に近い手」は、既成概念を凌駕したと言えます。
今後は、AIが打った手を、時間をかけてトッププロたちが解読していくことになるでしょう。

まだ課題も残っています。
一番のディープラーニングの弱点は、「説明をしてくれないこと」です。
次々と新しい手を生み出して、プロ棋士たちをなぎ倒していくでしょうが、着手の理由を説明はできません。
プロ棋士たちがその手を理解して、説明ができるようになって始めて理論付けが可能となり、人間の世界で利用可能となります。