【書評】感染症の世界史:賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ
正直まだまだ分からないことが多く、確実なことは何もありません。
抗体検査、抗原検査、PCR検査など様々な検査方法がありますが、精度もまだ高くありませんし、どのように使うかは目的によります。
無症状の人に対して使ったところで潜在的な感染者が炙り出せるわけではないですし、今のところ使う意義はなさそうです。
感染の広がりにしても、無症状、有症状の患者どちらが感染拡大に影響が出るのかも意見が割れています。
なので、コロナに関して断定的な意見を言える人は誰もいません。
そのような情報に出会っても混乱するだけです。
今のような状況では、過去の感染症の歴史を知ることが重要と考えています。
過去、スペインかぜ、天然痘など、コロナウイルスを超える規模で広がった感染症は多数あります。
そのような病気がどのような影響を人間世界に及ぼしたか、そしてどのように人間と共存していったかを知ると、今後のおおまかな予想がしやすくなります。
感染症に絞って書いた本書は、流れが追いやすくおすすめです。
【医療】抗体検査という徴兵は許されるのか
イギリスやイタリアで、コロナウイルスの抗体検査を導入というニュースが出てきました。
「一度感染した人は抗体を持っている。だから再感染しない。だからこういう医療者を集めて現場に投入しよう」という趣旨です。
しかし、この言葉には多くの希望的観測があります。
正しくは、
「一度感染した人は抗体を持っている可能性もある。再感染しないかもしれない。だからこういう医療者を集めて現場に投入しよう」
です。
①抗体検出について。
抗体検査によって、正しく抗体が検出できるかどうかは分かりません。
また、大半の無症状者では抗体値があまり上がっておらず、現在の検査キットでは正しく検出できない可能性もあります。(上記のガーディアン誌記事参照)
加えて、この手の検査には必ず偽陽性が存在します。したがって、感染していない人のなかに、不幸にも抗体陽性という結果が出たために現場に駆り出される人が出てくる可能性があります。
②抗体があっても安全とは限らない。
この感染症はまだ医学的見地が定まっておらず、抗体を持っていたからといって再感染するリスクが否定できません。
決して、コロナにかからない最強チームを作って送り込む、という話ではありません。
むしろ、現場の人手不足を解消するために、なんでもいいから指標をつくって送り込みたい、ということでしょう。
身長170cm以下で区切るよりは、抗体検査陽性で基準を作ったほうがマシ、というレベルです。
詳しくは、下記の記事がよくまとまっています。
そうはいっても、未曾有の事態です。なんらかの指標をもとに、なるべくリスクの低い方法を取りたいという為政者の考えはよくわかります。
また、すでにコロナ診療に携わっている専門の先生方にとっては、「誰でもいいから人手がほしい」でしょうから、このようなことであれ、新戦力が補充されるのはありがたいでしょう。
しかし、一臨床医としての本音は、根拠の薄弱な検査をもとに徴兵されるのはごめんです。
こういう事態のとき、お金があれば、さっさと医者やめて引きこもっているのかなあとぼんやり考えることもあります。
最近人生のテーマとしていた経済的自立ですが、あらゆるリスクヘッジになると痛感しています。
やっぱり医師の経済的自立は大切だと感じたコロナ騒動
コロナウイルス、かなりパニックの事態に発展しています。
検査ができない時代だったら、「なんか最近ひどい風邪がはやっているね」で終わった程度の重症度・感染力です。
で、この騒動に拍車をかける出来事がありました。
①感染症の専門家である岩田健太郎先生がクルーズ船に潜入した模様を、Youtubeにアップしていました。
②それに対して、厚労省に勤務されている高山義浩先生がFacebookに解説というか反論を書き、アンチ岩田先生が燃え上がる。
https://www.facebook.com/people/%E9%AB%98%E5%B1%B1%E7%BE%A9%E6%B5%A9/100001305489071
その結果、岩田先生は冒頭の動画を削除。
③そして本日、橋本岳副大臣が「我々はちゃんとやっている」というアピールの下、感染対策ができていない写真をアップ→炎上→削除。
https://www.j-cast.com/2020/02/20380142.html?p=all
今回の件で、私が感じたことは、どんなに専門家であっても、組織の論理に囚われるようになったらおしまいだということです。
確かにネット上では、②の段階で高山先生擁護派が増えていました。
そもそも、岩田先生、高山先生も高名な先生ですが、ただコミュニケーション能力でいうと、岩田先生は若干コミュ障、高山先生はソフトな話し方。
なので、どうしても感情論としては高山先生に軍配があがりやすい。
しかし、岩田先生が感染症専門家としての意見を述べているのに対して、高山先生の反論は、完全に厚労省の論理。
「現場で頑張っているんだから色々言ったって仕方ない」では医師として、専門家としての役割を果たしていない。
実際、岩田先生のYoutubeに対しての政府の反応は、「我々はきちんとやっている」と主張するのみ。
そこで起きたのが③の事件です。
一番まずいのは、これほどきちんとできていない状態で、きちんとできていると考えてしまっていることです。
すでにきちんとできていると考えてしまっていたら、後から検証しようとすらしません。
これが、高山先生の言う、「不完全ながら行っていたゾーニング」です。
何の意味もありません。
この実態を見ながら、「現場は頑張っている」とか言っても無意味です。
このゾーニングをくぐりぬけた船のクルー、乗客、はてはDMATの医療者たちが、ウイルスをくっつけて、全国へ散らばります。
自己満足で感染症を撒き散らしていては、専門家の意味がありません。
どうして、「貴重な意見をありがとう」で終わらせられないんだろう。
結局高山先生も、厚労省の職員になってしまっているので、組織の論理で考える癖がついてしまっているんでしょう。
なので、やっぱり医師はなるべくいろんな組織から、独立すべきだと私は思います。
まずは経済的自立。そして権威からの自立。
30代のあいだに前者は達成したい。後者は、深く戒めとしておきたい。
20-30代の勤務医向け③:お金の勉強
臨床の勉強はもちろん大切ですが、お金の勉強も並行して若いうちにやった方がいいです。特に、資産形成においては時間が価値を持ちます。
効果が出るまでに時間がかかるので、早期介入を行いましょう。
考えることは3つです。
①何歳まで、②いくらの資産所得
まず意識したいのが、何歳までにどのくらいの資産所得を得たいか。
この場合の資産所得とは、資産から投資によって得られる、いわゆる不労所得を指します。
要は投資で手っ取り早くアーリーリタイアしたいのか、手堅くリスク低く安定的に資産を増やしたいのか。
- 40歳までに資産所得が300万円
- 35歳までに資産所得が600万円
なのか、目標によって取るべきリスクが全然違います。
③許容できるリスク
目標所得が決まったら、取るリスクを考えます。
資産の利回りの目安は7%と考えています。
これは、アメリカ株の平均値(インデックス)の平均利回りです。
ざっくり言うなら、リスクを低く取りたければ3%、ほどほどなら7%、リスクを高く取りたければ10-20%くらいがいいでしょう。
経済学のリスクは医学のリスクと考え方が違い、ばらつきの大きさを意味します。
なので、高リスクの投資は高リターンも期待できますが、損の可能性も上がります。
試行回数を重ねると平均回帰するので、高くても7%くらいで設定するのが無難です。
これで、目標所得、目標利回りが決まったので、これで目標資産が決まります。
- 目標所得が300万円、目標利回りが3%なら、目標資産は1億円です。
- 目標所得が600万円、目標利回りが15%なら、目標資産は4000万円です。
目標資産を稼ぐまではリスクをとる
ここからが大事なのですが、目標資産を稼ぐまでは多少のリスクを取る必要があります。
50歳までに4000万円くらいの目標資産なら、そんなに急がずのんびりでもいいのでしょうが、40歳で1億円の資産を作るのであれば、計画的に増やす必要がありますし、それまでは目標利回りより高めのリスクを取った方がいいと、私は考えています。
というのは、勤務医はリスクを取ることが可能な職業だからです。
もし目標資産に届くのなら、その後は安泰ですし、もし高リスク投資で失敗しても、お金を稼ぐことを最優先にすれば回収可能です。
資産が小さいときに、教科書どおりのことを行っても、微々たる額しか資産所得が生じません。
多少はレバレッジをかける(FX, 不動産投資, オプション取引など)方法も経験しておく方がいいです。
資産が小さいときにこそたくさん失敗して自分に向いた投資を見つけることが大切です。
勤務医は趣味で医者をすることを目指そう
勤務医受難の時代に私がオススメする方法、それは「趣味で医者をする」ことを目指すものです。
決して収入を追い求めないわけではありません。期待しないことが大切です。
医師としてやりたいこと、目指したいことを考えたとき、収入という変数を外すことができると、とても自由度があがります。
お金がかからないなら、共同研究だってみんな喜んでしてくれます。セコセコと製薬会社をスポンサーにつけなくても、手弁当で勉強会をすればいいのです。
収入が下がっても気にしなくて構いません。趣味でお金が貰えるだけありがたいものです。
趣味なんですから、好きなことを勉強すればいいのです。
実際には、このくらい自由にしていた方が実績も出やすいですし、収入も下がらないとも思っています。
「医師とはかくあるべし!」みたいなタイプの方が危険です。技術の進歩によって淘汰される可能性があります。
趣味として医師をしていれば、いま何がアツいのか分かりますし、収入を意識しなければ、新しい勉強も簡単にできます。
結果的に、情報も人脈も築くことができるでしょう。
そうはいっても怖いです。これは。
どれだけ、今は自由な時代だとは言っても、趣味だけで高収入が得られるほど甘くはありません。
だから、橋頭堡というか、自分の経済的な砦を作ることが大切です。
安全圏があるからこそ、人はリスクを取れます。
このブログは、そのためのヒントをお届けできたらと思います。
私のおすすめは、ひとり法人、マイクロ法人を若い頃にもっておき社会保障のヘッジ、貯蓄しやすい環境を整えておくことです。
法人を持つことで考え方も変わりますし、社会勉強になります。多少の手間はかかりますが、金銭的な負担はないといってもいいです。
引き続きよろしくお願いします。
ベテラン勤務医はどこで働くのか
以前述べたように、勤務医の競争は激化します。
勤務医に生産性、つまりどれだけ診療報酬で稼ぐか、を求められる時代になってしまうと、ベテラン医師の行き先はなくなってしまいます。
元気な方は若手と張り合うでしょうが、いくら当直数を稼いで、プライベートの時間を削ったところで、結局は若手と同程度の給与水準がもらえる程度でしょうし、健康のためにもよくありません。
ベテラン医師の働き方
ではベテラン医師の行き先はどこになるでしょうか?
①医師不足地域の勤務医
これは一つの有力な選択肢です。医師不足地域はまだまだたくさんあります。
そういうところであれば人件費も高いです。
地方に住むということに不便を感じなければ満足度は高いでしょう。
②教育者としての生き残りは難しい
私は教育者としての医師の将来は明るくないと考えています。
なぜなら、「病院(雇用主)にとっておいしくないから」です。
病院の収入は診療報酬であり、患者を診療して入ってくるお金です。
そこで教育者としての医師を査定するのは、医師調達コストをどれだけ下げられるか、です。
つまり、その人をめあてに若手医師が集まるような、スター級の有名医師であれば、医師確保のために雇ってもらえるでしょう。
しかし、中途半端な指導医では意味がありません。病院にとってはそれよりも馬車馬のように働く若手医師の方が大切です。
そしてときどきスター級の医師を呼んで勉強会でも開けばいいのです。
中途半端な指導医を常勤で雇うのはコストです。
おそらく医局や専門医機構などの既得権益側はベテランの雇用維持のために指導医の人数規制などを導入するでしょうが、市場原理に反したもがきが成功するとは思えません。
③開業医
経営リスクをとって、開業するのは昔からあるキャリアパスです。
特に、事業承継などでいい立地・かかりつけ患者数の多いクリニックを引き継ぐことができれば安泰でしょう。
初期投資を抑えて地縁や人脈も揃っているのなら、60歳で開業することも可能です。
有力な選択肢ではあります。
暗い未来ではありません。これが今後の現実になるでしょう。
これまでのように年功序列にあぐらをかくことはできません。
私のおすすめは、ベテランという年齢になったときには趣味として医師を生きるという方法です。
20-30代の勤務医向け②:愚痴るのは絶対にやめるべき3つの理由
昨日は未来の話をしましたが、今日は現在の話。
医学の勉強をするのはもちろん大切ですが、それと同じくらい大切なのが成長マインドセットを身につけること。
一番まず気をつけて欲しいのが、絶対にグチるのをやめようということ。
グチがよくない理由は3つあります。
①フォロワーが離れていく
若手のあいだはともかく色々なチャンスをもらえます。
チャンスをくれる人との関係を大切にすることが大事。
そのためには、フォロワーを増やすことが大切です。
リアルな人間関係にしてもSNSにしても同様です。
仲間内で普段からグチっていたり、SNSでグチを書き連ねていくと、大切なフォロワーを失います。
大切な、フォロワーではありません。皆さんにチャンスをくれるような「大切なフォロワー」です。
SNSでは、グチを書くといいね!がついたりフォロワーがついたりしてなんとなく自己承認欲求が満たされます。
しかしそのフォロワーはステップアップのお手伝いはしてくれません。
フォロワーを増やす上でも、ネガティブな発言は避けたほうがいいという研究もあります。
②成長のチャンスを失っている
職場のグチ、人間関係のグチを言うのは、成長のチャンスを失っています。
成長マインドセットと言いますが、要するにすべてのことを自分事として捉える姿勢です。
これを手に入れられると、グチを言うことはなくなるはずです。
なぜなら、自分で物事を変えられるという感覚(自己効力感:self efficacy)を持つことができると、うまくいかないことがあっても、他人のせいにすることがなくなるからです。
同様に嫉妬もしなくなります。
上司が、患者さんが、いろんなうまくいかないこともあるでしょう。しかしそれを成長につなげるにはどうすればいいか?考えましょう。
がん診療ではよく、「患者さんが民間療法に逃げてしまった。悪徳業者に騙された。許せない。」などとグチる医師がいます。
それも事実でしょうが、その医師よりも悪徳業者の方が患者さんに信頼されたというのも事実です。
あまりに自分の患者さんが逃げられるようなら、その医師自身に問題があるでしょう。
グチる前に、まず目の前の患者さん、仕事に対してできることがないか、と思うことが大切です。
③無駄に感情がブレる
ネガティブな発言は負の感情につながります。
負の感情は伝染しやすいので、そのコミュニティ全体に負の感情が蔓延しやすくなります。
それによって、自身の自己肯定感は低くなり、いろんなことにチャレンジする気持ちも失われていきます。
なので、ネガティブな言葉を発する人とは距離を置きましょう。
あなたがグチをいうたびにあなたは他の人の感情を害し、成長機会を奪っています。
そして他の人のグチを聞くほど、あなたの感情は汚染され、成長する機会が減ります。
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今回述べたことは自己啓発ではありません。
モチベーションの話でもありません。
考え方の話です。
よく、やる気がないから仕事ができない、などと言う人がいいますが、そんなことはありません。
やる気がなくても仕事を続けることができるようにするのがプロです。
とかくSNSではインフルエンサーの言うことに乗っかってグチを書き連ねる人もいます。
それで著名人にいいね!やフォローなどのリアクションをされても、そのような人はあなたが困ったときに助けてくれません。
束の間のカタルシスを得られるかもしれませんが時間の無駄です。
特に中年くらいの医師がそうやっているのを、若手のみなさんは真似してはいけません。
グチを言いたくなるに至った感情をどうやって成長に繋げられるか考え、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。