【医療】抗体検査という徴兵は許されるのか
イギリスやイタリアで、コロナウイルスの抗体検査を導入というニュースが出てきました。
「一度感染した人は抗体を持っている。だから再感染しない。だからこういう医療者を集めて現場に投入しよう」という趣旨です。
しかし、この言葉には多くの希望的観測があります。
正しくは、
「一度感染した人は抗体を持っている可能性もある。再感染しないかもしれない。だからこういう医療者を集めて現場に投入しよう」
です。
①抗体検出について。
抗体検査によって、正しく抗体が検出できるかどうかは分かりません。
また、大半の無症状者では抗体値があまり上がっておらず、現在の検査キットでは正しく検出できない可能性もあります。(上記のガーディアン誌記事参照)
加えて、この手の検査には必ず偽陽性が存在します。したがって、感染していない人のなかに、不幸にも抗体陽性という結果が出たために現場に駆り出される人が出てくる可能性があります。
②抗体があっても安全とは限らない。
この感染症はまだ医学的見地が定まっておらず、抗体を持っていたからといって再感染するリスクが否定できません。
決して、コロナにかからない最強チームを作って送り込む、という話ではありません。
むしろ、現場の人手不足を解消するために、なんでもいいから指標をつくって送り込みたい、ということでしょう。
身長170cm以下で区切るよりは、抗体検査陽性で基準を作ったほうがマシ、というレベルです。
詳しくは、下記の記事がよくまとまっています。
そうはいっても、未曾有の事態です。なんらかの指標をもとに、なるべくリスクの低い方法を取りたいという為政者の考えはよくわかります。
また、すでにコロナ診療に携わっている専門の先生方にとっては、「誰でもいいから人手がほしい」でしょうから、このようなことであれ、新戦力が補充されるのはありがたいでしょう。
しかし、一臨床医としての本音は、根拠の薄弱な検査をもとに徴兵されるのはごめんです。
こういう事態のとき、お金があれば、さっさと医者やめて引きこもっているのかなあとぼんやり考えることもあります。
最近人生のテーマとしていた経済的自立ですが、あらゆるリスクヘッジになると痛感しています。