野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

【AIと医療】現時点でできること

これまで、センサーの種類、センサーで測定可能なもの、について述べてきました。

これで、ようやく人体の活動を「変数」としてセンサーで計測可能です。

現時点でもできることは幅広いです。
例えば、EWSというものを以前紹介しました。
EWSとは、early warning scoreの略です。
簡単に患者をスコアリングして、すぐに対応が必要かどうかを判定するというものです。
このような患者のトリアージ(優先順位付け)に、センサーは便利です。
このスコアリングはバイタルサインを元にしているため、これまで紹介したセンサーを身につけていれば自動的にスコアを計算可能となるからです。

しかし、これだけではあまり便利とは言えません。第一、先進国では、ここまで重症になるまでほっておくことはあまりありません。
先進国では、トリアージではなく健康管理の方が需要が高いでしょう。

センサーを使う強みは、身につけている間じゅうずっとデータをとることが可能だという点です。

まず可能になるのが、その人の正常値を知ることができる点です。人間の体は個人差がありますので、一般的な正常値がその人にとって正常かどうかはわかりません。さらに、一日のうちで変動も激しいうえに、緊張などでも変動するため、医療機関での計測値はあまりあてになりません。センサーによって集められた情報をみることで、その人の普段の値を知ることができます。

さらに、一日のあいだでの変動をみることも重要です。
例えば、不整脈の検出です。人間の心臓は、一日に数回は不整脈が出ています。それ自体は病的ではありません。
一方で、心房細動という不整脈がある場合は、心臓のなかで血液の流れが滞るため、血栓ができやすいという特徴があります。その血栓が心臓から外に送り出されてしまうと、脳梗塞を起こすことがあります。したがって、心房細動を持っている方には、早めに血液凝固剤といって、血液が固まりにくくなる薬を飲むことが推奨されています。

このような不整脈は、初期であれば一日のうち数秒、場合によっては一週間に一度程度しか起きません。したがって、患者自身に自覚症状があっても、医療機関を受診したときには不整脈を検出できません。現在では、ホルター心電図といって、一日中心電図をつける検査が一般的ですが、これでも検査できるのは一日だけ、つまり、3日に一度しか起きない不整脈であれば検出不可能です。

このような場合、センサーは便利です。その人の心電図をずっと蓄積することができますし、心電図の簡単な解析は現時点でも機械的に行うことができます。したがって、めったにでない不整脈であっても、検出することができます。たとえ自覚症状がなくても治療が必要な不整脈を持っている場合は、アラートを出すことも可能です。