野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

【AIと医療】医療の中心は「S情報」から「O情報」へ

前回までは、現段階でできることについて書きました。

今回は、データのイノベーションについてです。

ウェアラブルセンサーの発達によって、その人のデータを24時間ずっと計測することが可能となりました。その情報量たるや、これまでの一日に一回などの計測とは比べ物になりません。
日内変動、薬との関係などを細かく知ることができます。
しかし、その解析は医学だけではできません。

というのも、これまでの医学ではそのような大量のデータから考えるということをしていないからです。
むしろ、患者さんの言葉を聞きながら、それを元に考えることで発達しました。
患者さんの話を聞くことを問診と呼びますが、診断学の教科書では、「正しい問診をすれば、80%の病気は診断できる」と言われています。

このような、患者さんの言葉などを元にした情報を、医療現場では「S(subjective: 主観的)情報」と呼びます。患者さんから聞いたことであれば、飲んだ薬の名前であっても、これまでかかった病気の名前も、すべて「S情報」です。

対して、検査値などの数値データを「O(objective: 客観的)情報」と呼びます。
身長や体重、血液検査などはもちろん含まれますが、医師が診察で得られた所見(お腹がかたい、柔らかい)も「O情報」とされます。医師の診察はあるていど決まった手順で行うため、それで得られた所見も客観的とされるのです。

これまでの医学では、「S情報」を活用することで発達しました。
人と人とが接する上では、S情報の方がわかりやすいということが原因でしょう。
痛みを数値化するよりは、「腹がものすごく痛い」と青ざめている方が、私達にはよく伝わります。

しかし、これからは「O情報」の活用が進むでしょう。
例えば、血圧や脈拍などを通じて、この人は「◯時◯分◯秒から痛くなった」のかそれとも「午前中からだんだん痛くなった」のかがわかります。このような、病気の発症の仕方をオンセットと呼びますが、これは医療上は大変有用な情報です。これまでは、問診からその情報を得ていたのですが、S情報から正確に導くことは困難です。皆さんも経験あるでしょうが、お腹が痛くなったときに、それが突然だったのか、いつの間にかだったのか、はっきりしないことが多いのです。


これまで、私達人間は多くの「O情報」を見落としてきたのです。
患者さんの声色、肌の湿度の変化、関節のきしみ、足音...
センサーの視点から人間をみると、人間は無数の「O情報」に包まれていることでしょう。
その「O情報」のなかには、医療上重要なものも含まれているでしょう。
センサーを通じてこれらの情報が集められ、病気のデータとともに解析されると、これまでの診断学はがらりと変わるでしょう。
それこそ、「正しいセンサーをつけていれば、99.3%の病気が10秒以内に診断できる」可能性すらあります。