野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

【NEJM】10年かけて血糖を厳格に管理すると心筋梗塞は少し減るが死亡率は変わらない

Follow-up of Glycemic Control and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes

2型糖尿病患者は、心筋梗塞などの心血管イベントの危険が高いです。
腎不全や失明など、小血管イベントも重要ですが、命に関わるのは心血管イベントです。
心血管イベントは血糖濃度と関連することが知られているので、血糖をしっかり管理することで心血管イベントの数が減るのではないか、というのがこの研究の原点です。

「厳格な管理」とは、空腹時血糖値100 mg/dL以上あるいは 食後2時間値140 mg/dL以上が見られ たらインスリンの増量などの治療法の強化を行うというものです。

<方法>
Patient: 「2型糖尿病となった退役軍人」 で、

Intervention: 「血糖の強化管理」 を行うと、

Comparison: 「通常の治療」 と比べて、

Outcome
Primary outcome: 心血管イベントを起こすまでの時間がどうなるか
Secondary outcome: 心血管による死亡や、全死亡率がどうなるか

を調べました。

<結果>
9.8年間の追跡で、「血糖の強化管理群」が「標準治療群」とくらべて、心血管イベントを起こすhazard ratioは0.83に減少した。
計算すると、1000人・年あたり8.6の大血管イベントが減少したと言える。













<資金>
Funded by the VA Cooperative Studies Program and others; VADT ClinicalTrials.gov number,
NCT00032487.


<感想>
イントロのロジックが勉強になります。

一言で言うと、2型糖尿病に対する血糖の厳格管理については、あまり意味がなさそうです。
10年間やって、心筋梗塞を起こす確率が少し減るくらいでは、患者さんのQOLなどを考えると割にあわないでしょう。
まあ、死亡率が増加しないだけマシだ、とも言えます。
過去には、血糖の厳格管理によって死亡率が上昇した、という研究もありました。

 一方で、1型糖尿病については、血糖の厳格管理で死亡率が減少したという研究がJAMAより出ています。
やはり、1型と2型では、治療戦略が大きく異なるようです。

ちなみに、心血管イベントの比較は下図が分かりやすいです。



この図が、心血管イベントの下図を比較したものです。
微妙な差があります。












この図は、心血管イベントによる死亡率の比較です。
心筋梗塞心不全などを起こすが、死ぬことはないと言えます。












この図は、全ての死因を含めた死亡率です。
ほぼ差がありません。
血糖を厳格に管理しようが、通常の治療を行おうが、死亡率には差がありません。