【書評】ゼロ葬★★
0葬 ――あっさり死ぬ(島田 裕巳)
かなり挑発的なタイトルです。
マジメな宗教観を持っている方は、読まないほうがいいでしょう。
日本人的なというか、ぼんやりした宗教観の方であれば、読んでみるといいかもしれません。
筆者は、「葬式なんていらない」という主張の持ち主です。
それを論理付けるために、葬式の歴史から振り返っています。歴史の話は面白い。
個人的には、葬式不要論は1つの方法だとは思いますが、この本の論理には賛成できません。
筆者は、葬式はもともと仏教の教えではない、と言いますが、文化とはそもそも土着のものと融合して発展するものです。
葬式とは、日本土着の八百万の神の考えと結びついて発展してきたものです。
仏教ではないからいらない、なんて乱暴な。
そもそも本物の仏教徒自体日本にはそんなに多くないでしょう。
○読書メモ
葬儀業界は拡大傾向
2017年には売上高が2兆円規模に達する
そもそも、日本の葬儀費用は高い
世界の葬儀費用(葬祭業者サン・ライフが1990年代前半に行った調査)
アメリカ: 44.8万
イギリス: 12.3万
ドイツ: 19.8万
韓国: 37.3万
対して、日本の葬儀費用は231万(2007 日本消費者協会)
戒名
日本独特の文化で、『他の仏教国には、出家した僧侶が名乗る僧名はあっても、死者に授けられる戒名のようなものはない。』
『被差別部落の死者に対しては、一目でそうとわかる戒名が付けられた。』
戒名料のインフレ
『1969年(昭和44年)の相場は、
院号のつかない信士・信女(○○○○信士)→1万5000円以上
院号のつく居士・大姉(△△院○○○○居士)→5万円以上
さらにその上の院殿号(△△院殿○○○○大居士)→20万円以上』
→『1979年(昭和54年)には、
信士・信女で3万円以上、
院号のつく居士・大姉で10万円以上、
院殿号で50万円以上』
葬儀の発祥
本来、仏教は「出家」という言葉にもあるように、先祖を供養する考え方はない。
現在の葬儀は、もともとは、曹洞宗で修行中に死んだ雲水を弔うため
→螢山紹瑾が、俗人へ応用(雲水が修行に専念するために、経済基盤とするため)
筆者の主張
もともとの仏教の教えではないのだから、現在の葬儀にこだわる必要はない。
ひっそりと亡くなる道もあり。