野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

【医療】ゾフルーザを処方するのはヤブ医者だ

インフルエンザ、猛威をふるっています。

最初に結論から言っておきますが、インフルエンザとわかったときにゾフルーザを処方するのはヤブ医者です。
その医者には次からかからない方がいいです。

①ゾフルーザの効果が証明された論文
まず、ゾフルーザの効果の根拠となる論文をご紹介します。
ゾフルーザの場合、下記の論文に記載されているのが第三相臨床試験の結果です。


リンクはこちら
結果についてはこちらに詳しく記載されてあります。ここでは紹介しません。

この研究だと、1436人を集めて、タミフル、ゾフルーザ、プラセボの3群に分けて、結局治療を行ったのはゾフルーザ456人、タミフル377人、プラセボ231人です。
この結果を以て、ゾフルーザは販売が許可されました。

②ゾフルーザは安全性がわからない
しかし、この研究はゾフルーザがインフルエンザに対して効果があるかを調べた研究であって、ゾフルーザが安全かどうかを調べた研究ではありません。

第三相臨床試験の人数としては各群が200人程度であっても問題ありません。臨床的に効果があれば、助かる患者がいるということで販売は許可されます。
しかし、副作用についてはわかりません。少なくとも、大量の副作用が
一般的に、1000人に1人しか起きない副作用を95%以上の確率で検出するためには、3000人に対して薬を使用する臨床試験が必要とされています。
(詳しくは書きませんが、「n人に対して1/1000の確率で起きる出来事が発生しない確率」= 1 − (1 − 1/1000)^n ≥ 0.95 これを計算すると、n≒3000となります)
ですので、第三相臨床試験のような数字では1000人はおろか、200人に1人起きる副作用すらわかりません。

従って、ゾフルーザは安全性についてはまだ分かっていない薬と考えるのが妥当です。

③ゾフルーザは「代わり」がある薬
副作用が怖くても使用する薬は確かにあります。抗がん剤のように、使用しないと命にかかわる薬はそのとおりです。
しかしゾフルーザは違います。
ゾフルーザを避けるなら候補はいくらでもあります。最も使用実績が長い=安全性が示されているタミフルもありますし(余談ですが、上記の論文でもタミフルとゾフルーザの効果は同等です)、一回で済ませたいなら吸入薬のイナビル、点滴のラピアクタなど抗ウイルス薬でもこれだけあります。他にも、漢方薬麻黄湯がインフルエンザの症状・解熱に効果があるという臨床試験もあります。

④耐性化のリスク
さらに、ゾフルーザには耐性化の問題があります。
ゾフルーザの治療中10%に耐性化が起きる可能性があると指摘されています。
新型インフルエンザや鳥インフルエンザなど、新しいインフルエンザが出現するかもと言われているなか、現時点の薬が効かないインフルエンザウイルスを増やすことは得策ではありません。

⑤大手メディアではゾフルーザを推奨
大きなメディアではゾフルーザを推奨します。これはゾフルーザが新しい薬なので製薬会社が熱心に宣伝しているからです。
一方これまで大量に出ていたタミフルはすでにジェネリック医薬品が出現しているため、製薬会社の旨味がありません。なので熱心な宣伝が行われません。
その結果、大手メディアに出る医師たちはゾフルーザに肯定的なコメントを残します。

⑥結論:ゾフルーザを処方するのはヤブ医者だ
したがって、私はゾフルーザを処方するのはヤブ医者だ、と断言します。
ゾフルーザでないといけない患者さんが私には思いつきません。
亀田総合病院がゾフルーザの採用を見送ったことが医療界で少し話題になりましたが、決断には納得です。

小児→麻黄湯(そもそもゾフルーザの臨床試験は子供で行われていない)
成人→タミフル(最も使用実績が長く安全性が高い)
飲み忘れの多い高齢者→一回で済むイナビル、吸入できないなら耐性化リスクのない麻黄湯

自分がインフルエンザになったら何を処方するか?麻黄湯です。
新しい薬がでて無邪気に飛びつく医師は、基本的に勉強不足です。
困ったことに年配の医師に多い傾向がありますが…