野生医師@経済的自立を目指す勤務医

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【NEJM】脳卒中の血管内治療の効果

 2015 Jun 11;372(24):2285-95. doi: 10.1056/NEJMoa1415061. Epub 2015 Apr 17.

Stent-retriever thrombectomy after intravenous t-PA vs. t-PA alone in stroke.


 2015 Jun 11;372(24):2296-306. doi: 10.1056/NEJMoa1503780. Epub 2015 Apr 17.

Thrombectomy within 8 hours after symptom onset in ischemic stroke.



発症直後の脳梗塞患者に対して、これまではtPA治療といって血栓を溶かす治療が行われてきました。
これ自体も、麻痺を改善させるなどの効果が見込めるのですが、点滴で流すだけですので効果が限られています。
そこで、血管内治療、つまり血管内にワイヤーを入れて、つまっている血管を直接治療してしまえば、よりよい効果が生まれるのではないか?というのが出発点です。

一時は血管内治療がもてはやされました(1999 PROACT II 試験)。
しかしその後、血管内治療を併用しても、tPA単独治療に上乗せする効果がなかったという臨床試験が発表されます。(2013 IMS III, MR RESCUE, SYNTHESIS Expansion試験)
その結果、「いやいや血管内治療は効果あるでしょ」といっていくつもの臨床試験がでている、というのが背景です。(MR CLIAN, EXTEND-IA, ESCAPE SWIFT PRIME, REVASCAT)
上記カッコ内はすべて臨床試験の名前です。この名前で検索すれば論文が見つかります。
今回の論文は、このなかのSWIFT PRIME試験、REVASCAT試験の結果をまとめたものです。

<内容>
対象…頭蓋内の内頚動脈、中大脳動脈に閉塞を有する発症6時間以内の脳梗塞患者
治療…ステントを用いた血管内治療+tPA治療
対照(比較相手)…tPA単独治療
評価項目…脳梗塞発症から90日後時点での身体障害(麻痺などの程度)
結果…ステントを用いた血管内治療を併用することで、脳梗塞発症から90日後時点の身体障害程度を低くすることができた。

<感想>
この臨床試験は2つともCovidienによって資金提供を受けています。カテーテルなどで有名な会社です。現在はメドトロニック社に買収されています。
血管内治療に対して、専門家のなかで議論が続いています。
tPAだけでいい!という意見に対して、血管内治療もした方がいい!という意見が今は優勢のようです。
なぜ、血管内治療が優勢になったのか。

まず、「血管内治療に適した症例が分かってきたこと」です。
2013年に出た3つの臨床試験に対して、現在行われている臨床試験では、患者さんをより選んで血管内治療を行っています。
つまり、「内頚動脈や中大脳動脈など、比較的大きな血管に閉塞がある、発症6時間以内の脳梗塞」としています。これに加えて、脳血流ミスマッチや他の指標なども使っていますが、この辺りはまだ一致していません。
つまり、まだ血管内治療に適した症例は同定できていませんが、現在は最も保守的な基準で行っているのでしょう。
その結果、血管内治療を併用した方が良いという結果が得られました。
今後、どこまで血管内治療の適応が広がるのか、議論になると考えられます。

次に、「血管内治療の技術が進歩したこと」です。
当然ですが、血管内治療の器具も技術も新しくなっており、進歩しています。
その結果、従来よりも早く血管閉塞を解除できるようになりました。
今回の臨床試験では、患者が病院に到着してから90分以内に血管再開通を実現できています。
これまでは時間がかかったり、侵襲的すぎて行えなかったことも、技術が進めば有効な手段となりうることが示される良い例かと思います。

勉強になる論文でした。コビディエンにとっては、今後どこまで適応が広がるのか勝負どころです。