【Lancet】卵巣がんの術前化学療法に関する非劣性試験(CHORUS)
Lancet. 2015 May 19. pii: S0140-6736(14)62223-6. doi: 10.1016/S0140-6736(14)62223-6. [Epub ahead of print]
Primary chemotherapy versus primary surgery for newly diagnosed advanced ovariancancer (CHORUS): an open-label, randomised, controlled, non-inferiority trial.
進行卵巣がんの術前化学療法(手術の前に化学療法を行う治療)が、手術をしてから化学療法を行う治療に生存率が負けず、しかもより安全であったという論文です。
【内容】
550人のステージ3, 4の進行卵巣がん患者を対象とした非劣性ランダム化比較試験(Phase 3)です。術後化学療法(先に手術)と術前化学療法(後に手術)では、生存期間の中央値が22.6月 vs 24.1月で術前化学療法の方が長い。術後28日間の有害事象(出血など)は、術後化学療法での方が多かった。
【感想】
この研究は、イギリスのがん研究機関である「Cancer Research UK」(そのままだな)と、イギリスの王立産婦人科カレッジ「The Royal College of Obstericians and Gynaecologists (RCOG)」による資金提供を受けています。
術前化学療法は、製薬企業にとっては、新しい適応疾患が増えるわけでもないし、実臨床では効果があるなら勝手に医師がやっているので、あえて費用を出してまで研究する分野ではなさそうです。しかも、今回使われているカルボプラチン、パクリタキセルは以前からある薬のため、すでにジェネリックが出回っています。
いい記事があったので引用します。この記事によると、カルボプラチン+パクリタキセルの併用療法6コースをジェネリックを使って行った場合、自己負担は9万円安くなるとのことです。まあ実際は、こういう治療を行うときには高額医療費に引っかかるので、実際の自己負担は変わらない可能性も高いです。
話題が逸れました。術前化学療法は、手術困難な方が手術が出来るほどに改善することもあります。今回の論文は、まず化学療法で小さくしてから手術したほうが安全だし、より生存期間も延びるかもしれない、という論文でした。