野生医師@経済的自立を目指す勤務医

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【BMJ】オピオイド使用患者にベンゾジアゼピン併用は、過量内服死を招きやすい

Benzodiazepine prescribing patterns and deaths from drug overdose among US veterans receiving opioid analgesics: case-cohort study

先日、トヨタの役員も書類送検されていましたが、アメリカでは鎮痛薬としてオピオイド(麻薬)が非常に普及しており、気軽に処方されます。
その裏で、過量内服による死亡や、依存の問題などが出てきています。
今回の論文も、その流れで書かれたものです。

<方法>
Patient: 2004年から2009年まででオピオイドを処方された患者(アメリカの退役軍人)
Intervention: 「ベンゾジアゼピンを投与されている」 と、
Comparison: 「ベンゾジアゼピンを投与されていない群」 と比べて、
Outcome: 薬剤過量内服による死亡が増えているか、を評価する。
その定義は「National Death Indexを用いた死因分析により、その死亡が薬の中毒によって引き起こされたもの、意図的か偶発的かは問わない」と定義しています。

<結果>
過量内服による死亡は、
ベンゾジアゼピンを併用されている群」は、「投与されたことのない群」に比べて3.86倍
ベンゾジアゼピンを処方されたことのある群」は、「投与されたことのない群」に比べて2.33倍
に増加していました。

<資金>
This work was supported by funding from a Veteran Affairs Health Services Research and Development Service Career Development Award (CDA-09-204; ASBB.) and by the National
Institutes of Health (R03 AG042899). The sponsors had no role in the design and conduct of the study; in the collection, analysis, and interpretation of the data; or in the preparation, review, or approval of the manuscript of the decision to submit.

製薬会社の資金援助はなさそう。

<感想>
麻薬系鎮痛薬は、特に日本ではアレルギーがあるようで、怖いイメージがあります。
しかし、鎮痛薬のなかでは作用が強い上に副作用が最も少ないという特長があります。
特に、臓器障害を起こさないので、合併症がある患者に使いやすいです。
したがって、強い痛みが出る悪性腫瘍の骨転移などでよく使われます。
痛みが強い場合には、麻薬の副作用(依存など)が起きにくいとも言われています。

さて、麻薬とベンゾジアゼピンですが、併用される例はたくさんあります。
というのも、がん患者などでは、不安が強い方もいるため、ベンゾジアゼピン系の薬剤を使って不安をとってあげることも重要だからです。
従って、この論文にも書いてありますが、ベンゾジアゼピンを処方されるような患者は、もともと不安が強い、従って薬剤の過量内服を起こしやすい可能性があるとも言えます。
一緒の痛みと不安を抱える患者に対して、「オピオイドのみ」と「オピオイドベンゾジアゼピン」を比較した場合はわからない、と筆者も書いています。

論文結果を見ても、実臨床の行動を変えるには至らないでしょうが、臨床医として知っておいた方がいいのは間違いありません。