野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

【書評】復興〈災害〉――阪神・淡路大震災と東日本大震災★★★

復興〈災害〉――阪神・淡路大震災東日本大震災  塩崎 賢明

【まとめ】
所要時間は1時間半。資料として重要な本。
震災後の孤独死問題など、長期的な被害について書いています。

【著者紹介】
塩崎 賢明
立命館の政策科学部で特別招聘教授を務めています。
災害後の住宅復興の研究を行ってきた方です。

【感想】
災害の復興は数年から10年以上に及ぶことがあります。
その間に町が衰退したりすることを「復興災害」と呼びます。

阪神大震災の教訓として、仮設住宅でのコミュニティ崩壊があります。
当時は、入居者を弱者優先で決めたため、結果的に
『高齢の夫婦や一人暮らしの入居者が多数を占めることとなった。復興公営住宅での六五歳以上人口は四八%、単身高齢世帯率は四二%に達し、一般公営住宅の各々二三%、一九%に比べて二倍以上の高い比率』
という事態が出現しました。
これまで住んでいたコミュニティが壊されてしまった結果、孤独死などの問題が起きています。
この教訓を踏まえ、中越地震東日本大震災では、仮設住宅を元住んでいた集落ごとに決定するように配慮されています。

阪神大震災では、現在は公営住宅の問題があります。
公営住宅は、仮設住宅の後に住む恒久的な住宅、なのですが、その契約は20年であり、もうすぐ契約が切れてしまいます。
しかし、公営住宅の住民の半分以上は高齢者であり、かつ生活保護の世帯も26%にのぼります。
安易に追い出してしまうと、路頭に迷ってしまう方も多いわけです。

東日本大震災では、災害対策の予算について筆者はツッコんでいます。
2011年5月10日に出た「復興構想七原則」というものがあります。
これは、津波の被害全容が明らかになる前に出ており、その時点で復興への具体的な案ではないことが分かります。
さらに、「被災者」という語句が全く登場せず、住民視点の欠けた対策であることは明らかです。

筆者は、東日本大震災阪神大震災の違いを以下のように述べています。

①災害の種類が違う
『災害の様相が異なる。東日本大震災津波原発事故であり、阪神・淡路大震災直下型地震である。
前者の犠牲者の多くは水死、後者は圧死である。被災地の範囲も大きく異なる。
東日本大震災の被災地は地方の中小都市で南北六〇〇キロメートルにおよぶが、阪神・淡路大震災は東西一〇〇キロメートルの範囲に収まる大都市圏である。』

②住宅状況が異なる
東日本大震災では、被災者の従前住宅は、第一次産業に従事する人びとの比較的大きな持ち家が多いが、阪神・淡路大震災では都市住民の相対的に小規模な借家が多かった。』


東日本大震災は土地自体がダメージを受けた
『災害の原因と関係するが、東日本大震災では、被災宅地が津波放射能でダメージを受けており、そのままでは再建できないものが多い。阪神・淡路大震災では土地そのもののダメージは少なく、おおむねもとの土地での再建が可能』

さらに、避難が長期化していることも大きな問題です。
東日本大震災の重要な特徴は、一つは避難者が三年半を経てなお二四・七万人もいるということである。
仮設住宅の入居者を除いても一五万人が避難状態にあるという状況は、阪神・淡路大震災とくらべて大きな違いである』

避難が長期化するということは、それだけストレスも大きくなり、健康状況が悪化する可能性も増加します。

まだまだ東日本大震災は終わっていない、と言えます。