野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

【書評】介護ビジネスの罠

【まとめ】
所要時間は60分。
悪徳と経営努力の線引きが難しい。
現場を知れば知るほど悩みが深くなるのでは…。

【筆者紹介】
長岡美代
介護・医療ジャーナリスト。一般企業で経営企画にたずさわった後に介護業界に転身。現場などを経て、フリーランスで高齢者の介護や老人ホーム、在宅医療などの最新動向や問題点を取材し、月刊誌や週刊誌、専門誌などに執筆。

【感想】
筆者は正義感あふれており、様々な「悪徳」業者に取材を挑んでいます。

しかし、それが果たして正しいかどうかは疑問です。

介護業者も利益をあげなければ継続できません。
現状の制度を最大限に生かすこと自体は経営努力としてほめられてもしかるべきです。

しかも、介護費用のなかで行政負担を減らそうとする努力をすればするほど、利用者から搾り取らなければ経営が成り立たないのは当たり前です。
介護需要がこれだけあるのですから、どれだけ制度で縛っても、制度外で悪徳業者がはびこるだけです。

たとえば、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と介護事業所の抱き合わせが問題となっています。
それ自体が問題とは思えません。安定した介護サービスの供給が可能という言い方もできます。
もちろん、「うちの契約しているところ以外から介護サービスを受けるなら出て行け」というのは良くないですが。

介護施設が、「介護サービスをめいっぱい導入する」ことだって、批判されるべきかどうか疑問です。
利用者にとってみたら、介護サービスを受けることができるのはいいことでしょう。しかも、政府が「ここまでは使っていい」と枠を明示している以上、めいっぱい使うのは経営上当然でしょう。無駄な検査を省くために、DPCのような包括医療を推進する、それと逆のことが起きているだけです。

「具合が悪くなっても救急車を呼ばない」という介護施設介護施設での看取りは医療者からすると、全然不自然ではありません。むしろ、こういった批判があるから、介護施設側も責任回避のために救急車を呼び、夜中に病院へやってきます。少なくとも救急車を利用すべきではないでしょう。

介護のニーズは、介護される本人ではなく家族にあるという点も、問題を複雑にしています。
家族は、「この人を静かにおかせてもらえる施設があれば…」と願います。
「安く入所させてくれる」のはありがたい施設です。
それが悪徳であろうと、介護疲れの家族には関係ありません。

介護のコストを、誰がどこまで負担するかという問題に尽きます。
現在は公的負担が大きいために、気軽に介護に頼る家族が多いので需要がふくれあがる構図です。
自己負担が増えるなら、施設でなくて家で見ようという家族も出てくるはずです。

大幅に規制緩和しなければ、介護業界の継続性は限りなく低いでしょう。