野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

Lancet May 09, 2015

論文ご紹介。Lancetという世界五大医学雑誌の一つからです。COI(利益相反)を書いてみましたが、臨床試験がほとんどですので、製薬会社が資金源なのは当たり前です。まあ、試験結果をみるときにそれを考慮しましょうという程度です。

1. Menopausal hormone use and ovarian cancer risk: individual participant meta-analysis of 52 epidemiological studies

<内容>
閉経後にエストロゲンなどのホルモン製剤を飲むことで卵巣がんリスクが軽度上昇したというものです。5年以下の短期使用であっても上昇を認めています。(発症リスク 1.4倍)
50歳くらいで5年間ホルモン療法を使用していると、使用している1000人に1人卵巣がんが発症し、1700人に1人が卵巣がんで亡くなるリスクのようです。

<感想>
エストロゲン製剤といえばプレマリンなどありますが、さすがにマーケットが小さいのでこれによって大打撃というのはないでしょう。ちなみにプレマリンはPfizer(ファイザー)という製薬会社が作っています。

<COI>
論文は卵巣がんの研究グループが発表しています。内容から見ても製薬会社が資金源とは考えにくいです。

2. Maintenance treatment with capecitabine and bevacizumab in metastatic colorectal cancer (CAIRO3): a phase 3 randomised controlled trial of the Dutch Colorectal Cancer Group

<内容>
転移性大腸がんを対象とした第三相試験で、維持治療にカペシタビン+ベバシズマブが有効という結果です。

<感想>
死亡率の差は統計的に有意ではありませんし、患者数もそこまではいなさそうです。マーケットに影響は与えないでしょう。ベバシズマブはアバスチンという商品名で、海外はRoche(ロシュ)というスイスの企業が、日本では中外製薬が販売しています。カペシタビンも同じです。

<COI>
癌の論文は大体そうですが、この論文も製薬会社の資金提供ありです。オランダの大腸がん研究グループですが、そのグループがロシュ、サノフィ・アベンティスから資金提供を受けています。だからと言って全否定する必要はないですが、頭には入れておいていいでしょう。

3. Brentuximab vedotin as consolidation therapy after autologous stem-cell transplantation in patients with Hodgkin's lymphoma at risk of relapse or progression (AETHERA): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial

<内容>
ホジキンリンパ腫を対象とした第三相試験で、骨髄移植治療後のAdcetris投与が有効だった。

<感想>
倫理的な問題もあるのでしょうが、疾患が進行した患者が途中で治療の変更が認められるなどやや臨床試験のデザインが甘いです。

<COI>
シアトルジェネティクス社と武田薬品による臨床試験です。Phase 3で結果が出ていますので、売り出すのももうすぐです。患者数は少ないですが、治療法が少ない分野でもあります。価値の高い薬ではありますが、武田の規模を考えると株価に反映はされないでしょうね。

4. Fluorouracil and dose-dense chemotherapy in adjuvant treatment of patients with early-stage breast cancer: an open-label, 2 × 2 factorial, randomised phase 3 trial

<内容>
手術可能なリンパ節陽性の初期乳癌女性を対象とした第三相試験で、手術後の化学療法(ECP療法と呼ばれるもの)の投与間隔を短くしたところ無病生存率が上昇しました。これにフルオロウラシルを追加しても無病生存率は改善しませんでした。

<感想>
いま乳癌はアツいです。化学療法が効くため様々な抗癌剤が出ています。まずはがん予防のために50歳から74歳までの女性はマンモグラフィを受けましょう。

<COI>
イタリアからの論文です。ブリストル・マイヤーズ、Pharmacia(詳細不明です。ファイザーに吸収合併されたファルマシアという会社がありますが、同一でしょうか?)、Dompè Biotec(イタリアの製薬会社のようです)の三社から資金提供を受けています。

5. Chlorambucil plus ofatumumab versus chlorambucil alone in previously untreated patients with chronic lymphocytic leukaemia (COMPLEMENT 1): a randomised, multicentre, open-label phase 3 trial

<内容>
特に高齢者のCLL患者を対象とした第三相試験で、フルダラビン中心の化学療法が困難な方にOfatumumab+Chlorambucilを併用すると、chlorambucil単独よりも予後が良かった。

<感想>
血液腫瘍は、ある程度治療が固まっていますので、今後はこうした高齢者などを対象とした臨床試験が増えてくるのでしょう。日本頑張れ。

<COI>
グラクソ・スミスクラインとGenmabという企業が資金提供しています。GenmabはほとんどOfatumumab一本の企業で、これの研究開発でグラクソ・スミスクラインと提携しています。こういう企業は買収される可能性も高いので、投資してみるのもありかもしれません。Genmabはデンマーク企業のようですが、NASDAQに上場しています。