野生医師@経済的自立を目指す勤務医

お金にこだわらず、趣味で勉強しながら医師をするために経済的自立を目指しています。年利10-20%を目標に運用しています。2020年は資産所得300万円/年を目指します。

在宅医療では日本の医療は救えない

在宅医療が推進されています。
しかし、家族におしつけても日本の医療は良くなりません。
問題点をまとめてみました。

①効率が悪いところ。
そもそも、開業医であれば午前中で30人以上の患者をみています。
しかし、在宅医療であれば、せいぜい10人未満です。
場所によっては3, 4人しか診療ができません。

現在は往診の診療報酬が高いために、医者の経営上はあまり問題ありません。
しかし、これは本来あるべき姿ではありません。

本当に往診の需要が多いのであれば、非効率的な分を加算した対価を利用者側、つまり患者さんが払うべきですし、払う人が多いでしょう。
診療報酬で操作する必要はありません。

しかも、医療資源が非効率的に運送される無駄は考慮されていません。

患者管理だって、施設や病院でまとめて行えば効率的です。
労働集約型はスケールメリットが起きにくいとは言われますが、

家族が仕事を休みながら介護する場合と、
専門職が担当患者のあいだを効率的にまわって介護する場合では、
どちらが効率的かは明白でしょう。

②そもそも在宅ではない
「在宅医療」という言葉は非常に誤解を招きやすいです。
そもそも、厚労省は在宅医療推進の理由を、「生まれ育った家で暮らしたい」高齢者が増えているから、としています。

しかし実際は、高齢者が生活する場所は、サ高住(高齢者向けマンション)などにかわってきています。先日話題になった介護関連のニュース「東京圏高齢者は地方に移住を」でも、介護資源が少なくなるため「高齢者の集住化が必要」と結論づけています。
高齢者にとっても、田舎で一軒家で暮らすよりも、都市部の高齢者向けマンションで生活する方が便利です。
実際に、都市部の高齢者向けマンション需要は非常に高まっています。

こうなると、厚労省の主張する「生まれ育った家」で医療を受けたい人は、実はそう多くないのではないかと思います。

「国民のニーズ」を厚労省などが金科玉条のごとく掲げるのはいつものことです。
しかし、「『国民のニーズ』と『聖書の言葉』は同じ」だと私は考えています。
両方とも実態がなく、解釈次第で都合よく利用されるものです。

③本音は医療費の抑制
②で言ったとおり、在宅医療のニーズは本当はあまり高くありません。
では、どうして推進するのか。

それは医療費の抑制のためです。

在宅でみると、入院に比べると医療費は安くなります。
重要なのは、比較対象が入院である点です。
本来、入院でなければ面倒をみれない人を在宅でみるのですから、当然無理は生じます。

80代の寝たきり高齢女性を往診でなんとかもたせる、などよくあることです。

つまり、医療費抑制のために、医療者が行っていたことを患者の家族に押し付けるのが在宅医療です。
寝たきり患者の体位交換だって、おむつ交換だって技術が必要です。
まったく慣れない家族に任せることは本来非効率ですが、医療費だけからみるとマイナスになっています。
社会的なトータルコストは明らかに増えます。

医療費抑制のために、本来あるべき医療を捻じ曲げるのはどうかと思います。