【Lancet】心房細動の有病率は上昇している
Lancet. 2015 May 7. pii: S0140-6736(14)61774-8. doi: 10.1016/S0140-6736(14)61774-8. [Epub ahead of print]
50 year trends in atrial fibrillation prevalence, incidence, risk factors, and mortality in theFramingham Heart Study: a cohort study.
<内容>
心房細動の有病率を、1958-67年と、1998-2007年で比較しました。
1000 person-yearsあたり、つまりA人の人間をB年間(A×B=1000)観察していたとすると、
男性では
1958-67年の10年間では20.4例でしたが、1998-2007年の10年間では96.2例
つまり、4倍に増えていました。
女性では、
1958-67年の10年間では13.7例でしたが、1998-2007年の10年間では49.4例
に増加していました。
罹患率で比較すると
男性では3.7→13.4、女性では2.5→8.6例へと増加していました。
心電図による有病率は
男性では12.6→25.7、女性では8.1→11.8例へと増加していましたが、
罹患率は変わりませんでした。
したがって、もともと診断に関係なく心房細動を持っていた方の割合はほとんど変わっていなかったということになります。
心房細動の有病率が増えた理由は、しっかり検査するようになったことが関係していると思われます。
なお、心房細動をよく診断するようになった結果、脳卒中の発生率が74%減少し、死亡率が25%減少したと推計されます。
<感想>
この研究は、NIH, NHLBI, NINDS, Deutsche Forschungsgemeinschaft、
つまりアメリカとドイツの国営機関による研究です。
ここで、Incidence(罹患率)とPrevalence(有病率)の違いについて、簡単に書いておきます。
罹患率とは、定められた期間内で発症した、つまりこれまでなかったのに新しく診断された人の割合です。
有病率とは、ある時点においてその疾病を持っている人の割合です。
心房細動は脳梗塞の主要な危険因子のひとつです。
症状がなくても脳梗塞になってしまう危険があります。
これが明らかになったことで、よく診断するようになったのだろうと筆者は言っています。
最近ではカテーテルによる焼灼術で完治する人もいますが、放置期間が長いと治療後の再発が増加します。
「心房細動」と言われたら早めに医師を受診しましょう。
また、心房細動の患者で、よく「脳梗塞予防のために血をサラサラにする」といって抗血小板薬が出されている方がいますが、
心房細動に対する抗血小板薬は脳梗塞予防にほとんど効果がないですので、ご注意を。
ワーファリンや、その他の抗凝固薬をのむことが重要です。
<英単語メモ>
quadrupled 4倍になる